長い歴史の中で様々な瞑想坐法が生み出されてきました。代表的なものには結跏趺坐、半跏趺坐、達人坐、日本坐と呼ばれる正坐などがあります。
これらの坐り方は身体の隅々に分散しているエネルギー(気)を中心部へと集めてくれます。そして、集まってきたエネルギーによって背骨が引き上げられ、意識しなくても姿勢が整ってきます。
姿勢が整うことで呼吸はより深くなり、心は鎮まっていき、瞑想の状態へと近づくようになります。
禅には三調という言葉があります。調身(姿勢)と調息(呼吸)調心(心)が整うことを意味します。この言葉からも瞑想において姿勢が大切であることがわかります。
瞑想に適した坐法は様々ありますが、最も基本となるのが結跏趺坐です。結跏趺坐は固定された両足が土台となり、上半身が揺らぐことなく姿勢が安定する坐法で、長時間坐ることにも適しています。
結跏趺坐の足の組み方は、まず胡坐をかいた状態から右の足を左の腿(もも)の上にのせます。次いて、左の足を右の腿(もも)の上にのせます。この組み方が結跏趺坐の降魔坐です。日本と中国で発展した禅は
この降魔坐で坐ることが基本です。
この降魔坐には言い伝えがあるのでご紹介します。ブッダが悟りに近づいた時のこと。欲界の第六天が悪魔の姿を借りブッダを誘惑して悟りの妨害をしたそうです。この時に誘惑を払いのけた坐り方が降魔坐だったそうです。
一説によると自分の中にある魔の部分が降りていく坐法であるとも言われています。降魔坐を組んでいると悪魔が降りて来てしまうという意味はありませんので安心してください。
また、左右の足の組み方を降魔坐と反対にして、右足が下、左足が上の組み方にすると、吉祥坐と呼ばれる結跏趺坐になります。修行者は降魔坐、悟った者は吉祥坐に坐るとされています。
結跏趺坐は背骨が丸まり骨盤の硬くなった現代人には難しい坐法かもしれません。結跏趺坐を組むのが難しい方は、座布団を二つ折りにして尻の下に敷いてお尻の位置を高くします。そうすると、床に着いた両膝が支えとなり背筋をまっすぐにするのが容易になります。
結跏趺坐は背骨が垂直になりやすく、最も重力の影響を受けにくい坐法です。時には重力から解放されたかの様に身体が浮き上がる感覚をおぼえることもあります。組んだ両足の先が自分の両腿の内側に触れていることも結跏趺坐の特徴です。
さらに法界定印(印相)を組めば両手両足の先が自分の身体に触れていることになります。手や足の先からはエネルギーが出ています。この出ていくエネルギーが自らの身体に触れていることで、循環して戻ってくるのでエネルギーを漏らすことがない坐法となるからです。
両足を交差して固定する結跏趺坐は、股関節などが硬いと組むことが難しいかもしれません。尻の下に座布団を敷いても結跏趺坐が難しい方は半跏趺坐で坐るとよいかもしれません。
半跏趺坐の組み方は胡坐を組んだ状態から、右の足を左の股の下に深く引き入れます。次に左の足を右の腿の上にのせます。半跏趺坐は片足を組む坐り方です。
結跏趺坐と同様に座布団を二つ折りにして尻の下に敷いてお尻の位置を高くすると、床に着いた両膝が支えとなり
背筋をまっすぐにするのが容易になります。
達人坐はシッダーアーサナとも呼ばれています。ヨーガを実践されている方にはおなじみの坐法かもしれません。
足の組み方はまず両足を伸ばします。そして、右足の裏を左足の付け根にくっつける。この状態から左足の裏を右足の腿に付けます。
ヨーガといえば様々なポーズを思い浮かべる方が多いと思います。しかし、ポーズ(アーサナ)は、バタンジャリのヨーガスートラ8支則の一つです。健康や美容のビジネスとして8支則の一つであるポーズ(アーサナ)だけが切り取られて広まっているようです。
ちなみにアーサナとはアース(坐る)、サーナ(状態/場所)を意味するサンスクリット語だそうです。このことからも坐ることはヨーガにおいても重要な項目であることがわかります。
日本坐とはいわゆる正坐のことで、江戸時代に広まった坐法です。ヨーガでは金剛坐と呼ばれています。
禅の武道である剣道、禅の芸である茶道においても正坐が正式なものとされています。日本人であれば正坐として多くの方に馴染みのある坐法ですが、いまいちど日本坐の組み方を紹介します。
立った状態から片足ずつヒザを曲げて、かかとかかとの間に座ります。最後に左右の足の親指を重ねます。しびれた場合は重ねた足を交代させれば、しびれが治まりやくなります。